その日、僕は天使の羽根を13

帰ってもサトシは眠ったままだった。

ホッとした。

サトシは食事しないから温めてもらった弁当を食べる。

眠っているから、天井の照明は点けないまま。

キッチンの手元用の灯りだけ。

薄暗い中一人で食べる弁当はわびしい感じがするのかと思ったけど。

後ろのベッドからサトシの寝息が聞こえているだけで

なんか部屋の雰囲気までがいつもと違っているような気がする。

コンビニ弁当のゴミを片しているガサガサという音が耳に入ったのか?

サトシがモゾモゾと動いた。

んあれ?ここ翔くんち?

うん、よく眠ってたね。疲れたんでしょ?

そのまま寝てもいいよ。

飲み物も買ってきて、冷蔵庫に入れてあるから、欲しかったら飲んで

翔くんは?もう寝る?

俺はまだ。風呂入ってないし。

ちょっとやりたいこともあるし

じゃあ、僕も一緒に起きてる

サトシはベッドから出て、俺の隣にふわんと座った。

なんか体重を感じさせない子だよなぁ。

コテン、と頭を俺にもたせかけると、俺の顔を下から覗き込む。

チラっと見て視線を落とす。

聞こえるか聞こえないか、の小さい声で俺に聞いてくる。

明日もおでかけしちゃうの?

明日は休み。仕事には行かないよ

途端に表情が明るくなった。

サトシは俺に抱きついて来た。

じゃあ、ずっと一緒にいられるね!

そんなに嬉しい?

なんで俺とそんなに一緒にいたいの?

なんでって

翔くんのことが好きだから!

翔くんは?僕のこと好き?

無邪気に聞いてきた。

好き、って口から出そうになって

慌てて口をつぐんだ。

俺の返事を期待に満ちた目で待っているサトシは

単純に好き、って返事が来るって思ってるんだろう。

けど大人になってる俺は、そんな簡単に好きとは言えない。

もう風呂入ろうか?

サトシの質問をはぐらかした。